ひび

優しさに形があるなら、
それはあなたを介した何かだ。
誰も答えを知らない問いのさ、
解説本で棚が埋まってた。

羽田行きの電車が動きだす。
閑散とした車内、日が満たす。
ガラスがくすみ外は見えないな。
そんな事を誰も気にしていなかった。

枯れた未来にお湯を注ごう。
皺に許しを、
ひびには愛を。
爛れた指でなぞる暮らしを抱きしめた時、
張り裂けたエゴ。
Y字を過ぎ振り返ると、
涎垂らし侘しい、あの嘘。

正しさに舵を取らせたら、
それはあなたを割いて消えました。
誰も答えの知らない問いをさ、
考える事にまた逃げている。

羽田行きの電車が止まります。
弾丸の様に人が溢れ出す。
ガラスが軋み何も見えないな。
そんな事を誰も気にしていなかった。

枯れた未来にお湯を注ごう。
皺に許しを、
ひびには愛を。
その場凌ぎ構わないから、
嘘すらあなたのままで。

どうして、言葉にならない理由で、
人を愛しちゃうんだろう。
どうして、許されたい時ほど夢中で、
傷増やしちゃうんだろ。

枯れた未来にお湯を注ごう。
現在に慈愛を、
過去に理解を。
離れた場所で、繰り返す呼吸を僕は思って眠った。

最後のことばはできれば墓場で、
あなたの暮らしの端々に居させて。
誰かが唱えたまともに傷つかないで、
あなたの痛みの隣で歌うぜ。
最後のことばはできれば墓場で、
彼方に消える街など忘れて。
あなたは、あなたの、日々を抱きしめて、
わたしの罅すら愛したあなたへ。

すべての祈りを。
あなたに祈りを。
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