森~一輪の花

耳を澄ませば
聞こえてくる呼吸
生命(せいめい)の息吹
静かすぎて 歩けない

目を凝らさねば
見つからない出口
重ねた年輪
美しすぎて 触れられない

迷い込んだのは
深い森か?
心の奥底か?

ぽん…
ぽん…
聞こえてくる
花の咲く音
開く音

頬に当たる風は
そよそよ
咲(わら)い ほころんだ いのち
揺らす
でも
突然吹き抜ける風に
逆らうことはかなわない…

「……無常の風は時を選ばず、デスか」

散るのは
どんな音?
枯れるのは
どんな音でショウ?

迷い込んだのは
深い森か?
心の奥底か?

「…あの花は…」

心の臓から伸びる
巡る血の軌跡
赤き血の道筋

毒々しくも 美しき花
妖しくも 麗しき花
彼岸の花

「まるで……」
「ワタシのよう…デスか?」
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