残月

現世(うつしよ)の生命ふと長らえて
幽けきは旋律(メロディ)か言葉の色か
声を限りに呼べど届かぬ
あはれあはれ愛しきひとよ
おもしろうてやがてかなしき現身(うつそみ)の
縁のきざはし

ひとの世の苦しみは怨憎会苦の
繰り返す悲しみは愛別離苦の
ひと恋しさに中将姫の
尋ね訪ねし當麻寺(たいまでら)
振り仰げばいつか二上山の端に
恋の残月

行くも帰るも別れては
知るも知らぬも縁のきざはし
夢や現(うつつ)や有明の
恋の残月
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